人と住まいを守るために必要なもの9

換気についての基本的なお話しをご紹介しています。

第9回目も『全般換気方式の特徴』というお話しです。

4.自然換気(パッシブ換気)

自然換気(パッシブ換気)は、住宅の室内外の温度差によって生じる煙突効果を主動力とする換気です。

住宅の室内外に温度差がある時、空気の密度差での浮力による圧力差が生まれ、開口を通して換気が行われます。

室内空気の温度が外気よりも高くなると室内空気の密度は外気よりも小さいため浮力が生じます。

そうなると、室の上方には屋外に向かう圧力が、下方では室内に向かう圧力が生じます。

そのため質の周壁に開口があれば、上方では室内空気の流出が起こり、同時に下方では外気の流入が起こります。

これを煙突効果と呼びます。

自然換気方式には様々な考え方がありますが、多様な自然換気の一方式として給気を基礎断熱した床下空間を通じて行い、余熱を加えた上で上階の各空間に給気する方式があります。

排気は煙突効果の高さに比例しますから、給気口との高低差が充分取れる事が必要です。

例えば札幌程度の外気条件では、8m以上の高低差を取り、一般的には排気抵抗が少ない形状で耐久性の高い排気筒を利用する事が必要となります。

吹抜けの天井を高くして、高低差が充分取れる場合には壁面に排気口を設ける事も可能です。

但し、強風地域で排気口が風上側に向いていると排気能力が極端に低下するので、建設地の外部風の方向に配慮が必要となります。

給気は地中に塩ビ製のダクトを埋設して余熱を期待しながら給気する方法と、直接基礎面から給気する方法があります。

換気経由は基本的に床下から1階床面あるいは壁面に設けた開口を通じて新鮮空気を取り入れ、住宅内部の下から上への大きな空気の流れを利用します。

自然換気では機械換気とは異なり、各部屋への明確な換気量を規定する事は出来ないので、住宅内部を出来るだけオープン化し、住宅全部が1室とみなせるようなプランニングが必要となります。

自然換気用の給排気口による換気量は、一般的な規模の住宅で80~100立方メートル/時間程度と言われています。それ以上の必要換気量の過不足に対する対応は、居住者の手に委ねられることになります。

ただ内外温度差が小さい春秋期の対応として、給気管を1か所増やしておくと季節ごとに開閉して使う事が出来て便利でしょう。

そうは言っても、自然換気方式は窓を閉鎖する冬期間中心に換気計画を行うので、夏季や中間期においては室内外温度差が冬季ほどには大きくならないため、居住者の判断で換気や通風を心掛けて窓を開ける習慣を持つ事も大切です。

建築基準法に対応した建築物のシックハウス対策マニュアル(国土交通省・住宅局建築指導課、同住宅生産課、同国土技術政策総合研究所、独立行政法人建築研究所他編集/平成15年)でも、排気筒を用いた自然換気設備の有効開口面積の要件が示されています。

排気筒と給気口の有効開口面積の合計値を住宅の床面積の合計で除したもので、必要な有効開口面積は床面積当たりに必要な給気口及び排気筒の有効開口面積の数値に実室床面積を乗じて求めます。

トイレや台所等は、現在のところ排気ファンを設置しこれまでと同じく必要な時だけ局所運転する方法が最も簡単な方法です。

台所のレンジフードを運転時に対応する自然給気口を設置する必要はありません。何故なら床下に十分な自然換気口が、居室の換気用として既に設けられているからです。

レンジフードの運転時にこの部分からの給気量が増し、排気筒からの自然排気量が低下するだけで、室内の負圧やレンジフードの排気障害等の心配はありません。

24時間換気動力と比較すると、

換気動力エネルギーを削減出来る事。

換気装置のメンテナンスが少なくて済む事。

居住者が換気を停めてしまうリスクが少ない事。

がメリットとなります。

気密性能が良く(C値が0.3平方センチ/平方メートル以下)、外気温度が低くなる北海道には適応可能ですが、その他の地域や室内外温度差が縮小する中間期及び夏季には、中間期用の給気口の確保か常時運転可能な機械換気装置を設けて、地域の気候に合わせたパッシブ換気設計と良好な換気を得るための建築的工夫が必要となります。

自然換気方式の在来木造住宅の全館暖房は、間仕切壁の自然対流を有効利用して床下暖房のみによる事も可能です。

住宅には多くの間仕切壁があり、一部の間仕切壁の下部に放熱器や温風暖房器等を設置します。

そうする事で、間仕切壁を通じて床下と天井懐の間で大きな対流が生まれ、床面や間仕切壁からの自然放熱によって暖房熱源の多くを賄う事が可能となります。

主要な居室の床面や間仕切壁に適当な開口を設けておけば、換気の給気と共に不足分の熱量を補う事が可能なのです。

温度ムラが起こりやすい方式なので、全館暖房に用いる床開口の適切な有効開口面積を確保し、出来るだけ開放的な設計とする事が暖房計画の上からも望ましいのです。

 

 今回はここまでとします。

次回のお話しは引き続き『全般換気方式の特徴』となります。

幻冬舎ルネッサンス 刊/北村忠男 著/高気密木造住宅をもっと知ろうから抜粋させていただいています。

  

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  posted by Assed Red

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