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こんな記事を見つけました。
『気密性能と換気計画』
有限会社北欧住宅研究所
住環境コンサルタント/所長 川本清司
平成17年のものです。
内容も多いし、硬い内容なので、皆さんに知っていただきたい部分だけを抜粋してまとめたものをご紹介します。
まずは平成6年~13年までの7年間、C値0.5~2.5㎠/㎡の高断熱・高気密住宅×80件の換気量を調べた結果です。
必要換気量の0.5回/hを満たした住宅はどの位あったと思いますか?
びっくりすると思いますよ。
なんと、たったの1件だけなんだそうです。
ちなみに換気回数0.45回/h以上を確保していた住宅でさえも10%程度だったそうですね。
換気不足の住宅では、換気量不足が原因で窓に結露が出来たり、臭いがいつまでも残るなどの問題が発生していたそうです。
換気不足が起きる原因を挙げると以下のようになります。
①換気システムの設計をする際に、圧損抵抗計算を行っていない。
②圧損抵抗の大きな排気フードやダクト・チャンバーなどを採用している。
③ダクト配管に曲がりが多く、潰れや折れなどもある。
④圧損抵抗を考慮しない設計の為、換気能力がそもそも足りていない。
逆を言えば、これらをキチンと行えば換気不足は防げる事になります。
まずは換気不足の原因となる設計・施工を止める事が肝心です。
そして、その上で換気風量測定を行いましょう。
設計通りの換気量が確保されているかどうかを確認する方法は、これしかありません。
弊社が『機能する計画換気』の重要性を訴える理由はここにあるんです。
ただ計画換気を装備していても、設計・施工がきちんとしていなければ効果は期待できません。
また設計・施工の良し悪しを確認するためには、換気風量測定をするしかないんです。
もうひとつ、気になった記事がこれです。
住宅の気密性能と自然換気量と題されています。
どんな建物も、建物内の温度差や外を吹き抜ける風の強さによって換気が行われています。
暖かい室内空気は外気よりも軽いため建物上方の隙間から逃げ、反対に冷たい外気は下方の隙間から侵入します。
C値が大きければ隙間からの漏気による換気量は増え、小さければ減ります。
また風の強い日には、風の影響によりさらに換気量を増やすことになります。
次の表は、住宅の気密性能と内外温度差による換気回数を示したものとなります。
内外温度差20℃の時の温度差換気量は、C値が1㎠/㎡以下の建物であればおよそ0.07回/h。
C値が5㎠/㎡になるとおよそ0.33回/hになります。
20℃の温度差なんて、冬季であればざらにありますよね。
C値が5㎠/㎡以下の家であれば、換気システムに求められる0.5回/h+0.33回/hの換気が行われている事になります。
せっかく暖めた空気をドンドン捨てている気がしませんか?
ここまでは、私も知っていました。
ここからが、初めて知った新知識なんです。
先述の換気回数は、第3種換気であれば給気口全開で換気システム運転停止状態での事です。
第1種であれば、運転状態であっても同様の結果になります。
また、内外温度差が小さくなってくると温度差換気量は少なくなります。
でも第3種換気であれば室内気圧は1mmAq程度下がっていますから、通常の2階建てであれば、内外温度差94.3℃まで温度差換気は発生しないんだそうです。
えっ!
第1種換気では温度差換気が発生するから、漏気による熱損失はあるけど
第3種換気なら、漏気による熱損失は無いということ・・・。
スゴイと思いませんか?
次の表は、第1種換気システム稼働時の気密性能と風・温度差の関係を示したものです。
そしてこちらが第3種換気システム稼働時の気密性能と風・温度差の関係を示したものとなります。
どちらのデーターを見ても、C値が小さくなるほど漏気量が小さくなる事が確認できます。
やっぱり、C値が少ない家ほど漏気による熱損失が小さいんですね。(コレも知っていました。)
2つのデーターを比較するとこうなります。
風速2.5~3.0m/sと風速6.0m/sの時の換気回数は、気密性能の違いによってその換気量はかなり違います。
例えば風速6.0m/sの時
第1種換気は
C値5㎠/㎡以下で約1.512回/h
C値2㎠/㎡以下で約0.605回/h
C値1㎠/㎡以下で約0.302回/h
ですが、
第3種換気は
C値5㎠/㎡以下で約1.403回/h
C値2㎠/㎡以下で約0.496回/h
C値1㎠/㎡以下で約0.193回/h
になります。
第3種はファン稼働時は室内が負圧になるため、その負圧分だけ控除されて風力換気量も温度差換気同様に少なくなります。
どの位少なくなるかは、住宅の気密性能・給気口の数・第3種換気による総排気量・相当隙間面積αA・平均風圧係数・風速・内外温度差等によって異なります。
次の表によれば、150㎥の住宅でC値1㎠/㎡以下、給気口(14㎠)×5個で第3種換気を0.5回/hの換気量で運転した時に発生する室内負圧は0.377mmAqです。
温度差による上下の圧力差はこれとほぼ同じ(0.318mmAq)ですから、温度差が30℃の時の温度差による換気量は0回/hとなります。
この条件下では、第3種換気システムが稼働していると気密性能も関係して、風速が6m/sの時では0.302~0.193回/hに減少し、温度差換気量は発生しないことになります。
これに対して第1種換気システムは稼働・非稼働に関わらず、内外ともに気圧のバランスが取れているので機械換気による室内負圧が発生しません。
従って、第3種換気に比べて自然換気量が多くなります。
C値1㎠/㎡以下の住宅であれば、その自然換気量は次の表のようになります。
長々とすいません。
川本氏の記事はまだまだ続くんですが・・・。
高断熱・高気密住宅における換気システムの選択は、中々難しいものがあります。
弊社では第3種換気システムをお勧めしていますが、世に溢れる情報はどちらかと言えば
「第1種換気システムを採用すべき!」の方が多いと思われます。
今更で申し訳ありませんが、
第1種換気システムは、給気・排気ともに機械で行います。「熱交換装置」を組込み、排気熱と給気熱を交換する事で換気による熱損失を少なくするものが主流になっています。
また熱交換素子の違いにより顕熱交感・全熱交換の2種類がありますが、全熱交換の場合はトイレや浴室等の局所換気が別途必要になります。
第3種換気システムは、排気のみ機械で行い、建物内を負圧にする事で自然給気を行います。
第1種換気システムと第3種換気システムを比較したものを示しました。
通常、両者を比較・検討する際は
イニシャルコスト(本体・付属品および工事費)
ランニングコスト(排熱回収分を含む、電気料)
が問題になります。
でも実際には局所換気の有無によって
局所換気のイニシャルコスト
局所換気のランニングコスト
も重要な問題なんです。
一般的に局所換気の寿命は換気システムに比べてかなり短いですから、修理・交換コストも考慮しないといけません。
回収率90%と謳われている換気システムも、実効回収率は60%程度と言われていますが、局所換気からの排熱ロスを見込めばもっと低い回収率になると思われます。
まして、今回の記事にあったように自然換気による熱ロスがこれだけ違うのであれば・・・。
北海道や東北・北陸の一部以外の地域では、第3種換気システムの方が有利なのではないでしょうか?
あくまでもC値が1.0㎠/㎡以下であればの話ですけど・・・。
その他、フィルターの交換経費や給気ダクトの中の埃による空気汚染の問題なども考慮する限り
弊社のイチ押しは、やはり第3種換気システムという事になりますね。
久し振りに文字だらけの長文ブログになってしまいました。
ゴメンナサイ・・・。
posted by Assed Red
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