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例えば、断熱性能を高めるためには防湿・気密性能も同時に高めなければなりません。
そして、気密性能を高めてしまったら計画換気を行う必要が生まれます。
気密性能が低ければ計画換気の必要がないけど、計画換気は気密性能をある程度以上高めなければ機能しません。
なんだか矛盾を感じてしまいます。
創業から27年間、高断熱・高気密住宅をつくり続けてきた弊社では
いつも
高断熱
高気密
計画換気
をセットで考えてきました。
でも、計画換気に関しては『モヤモヤしたもの』がいつも心に引っ掛かっているんです。
北海道化学大学工学部建築学科教授 福島明氏
による
『換気システムの課題とこれからの住宅換気』
第4回 熱交換はお得か?
というコラムをご紹介したいと思います。
モヤモヤしたものを具体的に解き明かしてくれています。
私はかねてから、熱交換換気装置の省エネルギー性については疑問を呈してきました。
断熱が進んで熱損失が小さくなると換気の熱損失の割合が大きくなるので、計算上とても大きな効果があるように見えます。
ある換気メーカーが公開している換気装置の省エネ効果では、
隙間換気を考慮し、内外温度によって給排気をコントロールすることでファン動力を3種換気並みに抑えられるとあります。
熱交換効率は80%以上に達するようですね。
この結果、札幌だと7万円、関東でも2万5千円の省エネ効果があると主張しています。
これは、ちょっとした高断熱住宅の年間暖房費支出に匹敵する金額になります。
つまり一般的な暖房用エネルギー消費量と同じ熱回収効果が得られる。
暖房費が『ただ』になるということです。
こんなパラドックスが起こるのは、二つの理由があります。
一つは、回収した熱量をそのまま、省エネルギーとして計算しているからです。
確かに回収した熱量としては正しいのですが、実はそこに誤解があります。
これでは暖房必要温度以上の時間帯や、暖房していない時間の熱回収も計算してしまいます。
もしこの時間に熱回収をしていなかったとしても、暖房負荷は生じませんね。
特に断熱性が高い家では内部取得熱の効果が高まり冬季でも暖房の不要な時間が増えてゆくため、こうしたことが起きやすくなります。
もう一つは、隙間からの換気や台所レンジファンなどその他の換気を全く考慮していないことです。
ここで、暖房時に機械に頼る部分がどれくらいなのか簡単な試算をしてみました。
隙間や局所換気の運転、屋外との出入りで、0.2~0.3 回 / h程度の換気が起こります。
全体換気を 0.5 回 / hとすると機械換気装置に期待されるのは0.3 回 / h程度というのが実態でしょう。
冬季の隙間換気量を考慮した結果を見ると、換気装置の導入効果は、札幌で1万4~5千円、東京で6~7千円程度の差しかありません。
それでは、熱交換換気装置の実質的な回収効率はどの程度と考えるべきでしょうか?
隙間換気を0.2回/hとしてトップランナーの熱交換効率 90%で回収すると最終効率で 54%。
国内の一般的な装置は熱交換効率 50%程度ですから、最終効率で 30%となります。
まるで、すべての換気を熱交換換気装置で行っているかのような表現が見受けられますが、
実際は、装置の効率がどんなに良くても、実質の効率はこの程度、と考えるべきです。
次にファン動力を含めた省エネルギー効果を比べてみましょう。
ファンの電力消費は、DCファンなどを用いても年間 500 KWにも達します。
ファン動力の成績係数は1ですが、エアコン暖房の成績係数は3です。
回収できる暖房エネルギーがファンの電力消費量の3 倍でも差し引き0になってしまいます。
導入効果を実感するには 5倍ぐらい、2,500 KWくらいないと意味がありません。
たとえ、超高気密住宅が実現したとしても、これが実現できるのは、寒冷地だけでしょう。
暖房費とファン動力費を合わせて比べてみると、国内で多く用いられている比較的効率の高い熱交換換気システム(熱交換効率60%、DCファン)では、東京でも札幌でも熱交換換気装置の設置によって、かえって費用が増大します。
経済性だけでは判断できないことが理解いただけたでしょうか?
本当は、表やグラフを使って説明をしてくれています。
でも、著作権の関係でそれらの2次利用が出来ません。
元ページを貼っておきます。是非ご覧ください。
熱交換換気装置を利用すれば、なんでも省エネになる訳ではありません。
建物の隙間からの漏気や、換気システム以外からの換気によるロスと換気自体の消費エネルギーにより第3種換気装置の方がより省エネになるケースも多々あるんです。
それぞれの長所・短所をしっかりと理解し、判断することが重要です。
posted by Asset Red
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