オーバーヒート対策

地球温暖化を防ぐためにも、住宅の省エネ化を推し進めなければなりません。

高性能設備の導入も、その対策のひとつではあります。

でも私達、建築に携わるものとして一番に取り組むべき事は外皮の断熱強化と日射利用(取得および遮蔽)となります。

採風(通風)を挙げる方もいますが、1年間を通じて採りこむことの出来る風(湿度・温度とも室内空気より低い事が条件となります。)はわずかしかありません。

お住まいになる方の運用ひとつで、逆に増エネに繋がることも良く理解する必要があるでしょう。

やるのであれば、温湿度計を室外と室内に設置して、それを見比べつつ、条件に合う時だけ風を採り込むようにしましょう。

外皮の断熱強化と言えば、開口部の断熱性能・躯体の断熱性能の向上となります。

そして夏季であれば日射の侵入を防ぐ工夫をし、冬季であれば日射取得に努めます。

でも断熱性能を向上し、日射取得を行い過ぎると、冬季にも関わらず室内空間でオーバーヒートが生じることになります。

こうした上昇し過ぎた室内空気を下げるためには、窓を開け、せっかくの熱を排出しなければならないのです。

この『余分な熱』を室温の下がりやすい夜間に利用する事が出来れば・・・。

室温のオーバーヒートを解決する手段として、住宅内部の蓄熱容量を増大させる方法があります。

蓄熱材料を室内に設置する事で、冬季は日中の日射熱を蓄熱し、室温の過剰な上昇を防ぎます。

また、貯めた熱量を夜間に放出することで暖房負荷の削減も可能です。

夏季には、夜間の涼しい外気を日中まで蓄冷する効果も併せ持っています。

伝熱のタイムラグを利用することで暖房エネルギーの削減が期待でき、さらに室内の温度差を少なくし温熱環境の向上することができます。

しかし木造住宅においては、RC住宅のように躯体に蓄熱させることが難しいため、蓄熱に関する具体的な研究はされていません。

今回は、新住協技術情報『木造住宅における熱容量の住宅熱性能に及ぼす影響に関する研究』の中より、その一部をご紹介します。

シュミレーションには次のモデルプランを使っています。

住宅の方位は南向き。

南面の開口部をどの程度大きく取れるかを検討し、Ⅲ地域以南では窓面積M(立面図参照)としています。

躯体性能は以下の通り。

次世代省エネ基準・・・天井:BGW18K(205mm)/外壁:HGW16K(65mm)/基礎立上:PSF3種(50mm)/床:PSF3種(90mm)

基準より暖房エネルギー△50%・・・天井:BGW18K(205mm)/外壁:HGW16K(105mm)/基礎立上:PSF3種(50mm)/床:PSF3種(90mm)

基準より暖房エネルギー△75%・・・天井:BGW18K(300mm)/外壁:HGW16K(105+45mm)/基礎立上:PSF3種(100mm)/床:PSF3種(135mm)

また、開口部仕様は以下の通り。

次世代省エネ基準・・・南:アルミペアガラス(ハニカムスクリーン無)/東西北:アルミペアガラス

基準より暖房エネルギー△50%・・・南:アルミPVC複合ArLow-E(ハニカムスクリーン有)/東西北:アルミPVC複合ArLow-E

基準より暖房エネルギー△75%・・・南:アルミPVC複合ArLow-E(ハニカムスクリーン有)/東西北:アルミPVC複合ArLow-E

尚、ハニカムスクリーンは断熱戸として、南面の窓に夜間18時~6時まで使用している。

また熱交換換気システムは、次世代省エネ基準のみ不採用とし、その他は回収率50%のシステムを採用しているものとする。

木造住宅においては、熱容量を増大させることが困難な事は先述の通りです。

そこで今回のシュミレーションにおいては、内装材として主流である石膏ボード仕様を基準とし、漆喰やモルタル塗り等の熱容量部材を配置した時の省エネ効果を検討します。

1つの断熱仕様における以下の8つの熱容量仕様で比較し、その仕様と記号は以下の通りとなります。

さて、結果です。

Ⅳb地域(福島)における灯油消費量について比較しました。

まずは次世代省エネ基準です。

続いて削減率50%。

最後は削減率75%です。

熱容量を付加することで、ある程度の暖房エネルギーの削減は可能なようです。

また躯体と開口部の性能を高めることで、熱容量による灯油消費の削減効果は高まります。

今回は、他の地域のデーターは割愛しましたが、熱容量による省エネ効果は日射の多い地域に顕著に見られます。

断熱レベルを向上させ、さらに窓面積を拡大し、日射熱の蓄熱効果を利用すれば、日射量の多くない地域でも多少の省エネ効果は期待できそうです。

オーバーヒートについて見てみましょう。

Ⅳa(水戸)の結果となります。

次世代省エネ基準、Q1.0の順で3つのパターンを順番にご覧いただきます。

まずは3月29日(外気温:高/日射量:多)

 

続いて2月13日(外気温:低/日射量:多)

そして最後は12月20日(外気温:低/日射量:少)

外気温が高く日射量が多い日は、夕方までオーバーヒートが生じています。

断熱性能の高いQ1.0住宅においてその傾向が顕著に表れています。

熱容量を付加することで室温の変化はなだらかになり、温度差も少なくなっています。

また床断熱と基礎断熱を比較すると、基礎断熱の方が最高室温が低くなり、夜間の最低室温が高くなることもわかります。

外気温が低く日射量が多い日も、日射量が多い為オーバーヒートを起こしています。

その程度は高温・多日射ほどではありませんが、発生していることに代わりはありません。

外気温に関わらず日射量のコントロールが必要ということでしょう。

外気温が低く日射量が少ない日の場合、少ないながらも日射の影響で室温は上昇しています。

でも熱容量の大きいモデルは、住宅自体が暖まりにくくなっています。

基礎断熱モデルの方が床断熱モデルほど低下せず安定しているのも同じです。

蓄熱材料を配置することで、日中のオーバーヒートはある程度低減できることがわかりました。

環境工学による快適温度範囲は20~24℃とされていることからも、25℃以上になると窓を開けてしまう事が予想されます。

今回のシュミレーションを通じて、熱容量付加モデルは本州の都市部においては30℃を超える結果になってしまいました。

さらなる熱容量付加の増大が夜間への有効利用と言えそうです。

やっぱり、蓄熱って難しいですね。

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