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天気ははっきりしないけど、気温は少しづつ上がっています。
久し振りに30℃近くになるのかな?
そんな静かな日曜日、完成した『FPの家 Y邸』の換気風量を測定してきました。
その様子をご紹介する前に、少しだけ堅い話にお付き合いください・・・。
こちらのお宅で採用している換気システムは、日本住環境㈱(以下NJK)のルフロ400。
ダクト式第3種換気に大別されるシステムです。
汚染空気の発生源からダクトで運び、DCモーターで排気を行います。
ある程度の気密性能が確保出来ている建物であれば、建物内は負圧となります。
建物の外の方が気圧が高くなれば、居室の外気に接した壁に設置した自然給気口から、新鮮な外気が入って来ますよね。
汚染空気を排出し、新鮮空気を採取することにより人体に悪影響を与えない空気質を保つ。
これが第3種換気の仕組みです。
先程、ある程度の気密性能と書きました。
どの位の気密性能が必要だと思いますか?
一般的には、C値2.0㎠/㎡が限度と云われているようです。
床面積100㎡の家であれば、隙間の合計面積が200㎠以下となります。
14.14cm×14.14cmの隙間って、かなり大きいですよね。
ちなみに弊社では、C値0.6㎠/㎡以下を換気システムの運用上必要な気密性能と決めています。
その訳は次のイラストを見ればわかるでしょう。
NJKのカタログから転載させていただきました。
横軸が建物のC値、縦軸が自然給気口からの給気量の割合を示しています。
先程目安と云ったC値2.0㎠/㎡の場合、およそ35%の空気しか給気口から入ってこないことがわかります。
残りの空気は、窓の隙間や壁などの隙間から入ってきていることになります。
例えば寒い朝、窓の隙間から5℃の冷気が吹き付けてきたらどうでしょうか?
仮に樹脂窓を採用していたとしても、暖かい窓に冷たい風が当たっていれば結露が発生するかも知れません。
その度に拭けばいいのでしょうか?
では壁の隙間から入ってきたらどうでしょうか?
5℃の空気が壁の中に侵入し、断熱材を透過して、コンセント辺りから室内に侵入すると仮定しましょう。
室温は20℃とします。
壁の外が5℃、室内が20℃ですから、断熱材自体の温度は16℃くらいでしょうか?
水蒸気を含んだ16℃の空気が、5℃の空気に触れれば結露しますよね。
内部結露と云います。
でも、先程の窓のように拭くことはできません。
ひたすら乾くのを信じるしかありません・・・。
0.6㎠/㎡の場合でも、およそ65%の空気しか給気口から入ってこないんですよね。
できれば、もっと気密性を高めたいと思います。
ちなみに弊社の建物のC値は、0.1~0.3㎠/㎡位が普通です。
でも、建物の隙間って経年劣化する事が判っています。
新築から10年もすると、0.4位は普通に悪くなってるんですよね。
そして、その後はあまり変化がありません。
だから0.1~0.3㎠/㎡の建物であっても、10年後には0.5~0.7㎠/㎡になっていることが多いんです。
サッシのパッキンを変えたり、建付け調整をすれば元に戻ることもあるそうです。
だから、新築時のC値は0.3㎠/㎡以下が好ましい。
と思っています。
そして隙間が少ないと、もうひとつメリットがあります。
イラストではC値0.5㎠/㎡と5.0㎠/㎡の家を比較しています。
『隙間だらけのスカスカ住宅では、入口が多数ある事になります。たとえ強制排気で出口をつくっても、計画的な換気ができません。』
意味わかるでしょうか?
こんな説明をすることもあります。
このイラスト、ネットから拝借しました。
コーラらしき飲み物を穴の明いたストローで飲もうとしています。
こんな経験お持ちでしょうか?
吸っても吸っても、穴から空気が入ってしまいます。
残念ながらコーラを飲む事はできません・・・。
漏気の多い建物も一緒です。
いくら排気をしても、様々な隙間から外気が入ってしまえば、換気経路を明確にすることなんて出来ません。
換気をする上で重要な事は、出口と入口を明確にする事なんです。
そしてイラストのように、空気が淀んでしまうことの無いような配管経路にすることも重要なんです。
弊社の場合は、NJKに換気計画をお願いしています。
大まかなC値を伝えそれに見合った計画になっている筈ですから、きちんとした施工が出来ていれば問題ない筈。
でも『きちんとした施工』が難しいんですよね。
自然給気口や排気口、換気システム本体の設置自体は簡単です。
それほど難しい訳ではありません。
でも、ダクト(配管)が難しいんです。
圧損(圧力損失)とは、空気などの流体が機械装置・管などを通過するときの時間や量におけるエネルギー損失のことを指します。
摩擦損失と呼ぶこともありますが、住宅の場合は主にダクトなどで空気が流れにくくなることを云います。
①ダクト内の圧損はダクトの長さに比例します。
つまり、長さ10mのダクトは5mのダクトの2倍圧損が多くなる訳です。
②ダクト内の圧力損失は流速の2乗に比例します。
つまり、流速が2倍になると圧損は4倍になる訳です。
径50mmの塩ビ管と100mmの塩ビ管の断面積は4倍です。
同じ流量であれば、流速は後者の方が1/4になります。
この時の圧損はなんと1/32倍!
これは、ダクトが潰れたり折れ曲がった場合も同様なんです。
イラストのような部位は、圧損が増えるので要注意です。
でも、実際にはイラストのような施工は当たり前に行われています。
本当に計画通りの換気って行われているのでしょうか?
と云う訳で、弊社ではお引渡し前に換気風量の測定を行っています。
ここからは、今日の測定の様子です。
簡単にご紹介します。
こんな測定器を使います。
単位がパスカルになっています。
測定に当たって、まず行うのは自然給気口を開けること。
自然給気口です。
中には、防虫・防塵・防花粉対策用のフィルターが入っています。
『外気は新鮮できれいなもの』という常識にたって換気計画では『外気導入』を是としています。
でも昨今の外気って、色々ありますよね。
フィルター無しの給気なんてあり得ないと思いませんか?
話が逸れてしまいました。
下を閉ざした状態で、上を開放させるように開けます。
全ての給気口をこのような状態にしてください。
次に天井にある排気口の開度調整です。
開度は、換気図面に1~5の数字で指示されています。
排気口についている目盛に三角形を合わせるように内側を回せば完了です。
準備完了です。
測定器のノズル先端を排気口の中央にある穴に挿し込んで、何パスカルあるかを読み上げます。
弊社の場合は、2人1組で測定を行います。
1人が測定し、読み上げます。
もう一人は読み上げられた数字を表に欠き込みます。
換気図面には、目安となるボリュームレベルが記載されています。
コントローラーのレベルを指します。
数字が大きくなるほど風量が大きくなり、小さくなるほど省エネになります。
今回は、『1.0・1.5・2.0・2.5・3.0』の5レンジの風量を測定しました。
測定器の値を読み上げる度に、ボリュームを上げ、また風量を読み上げる。
これを全ての排気口で、5レンジ分行いました。
風量測定完了です。
パソコンに入力して、パスカルを㎥に換算しないとなりません。
ボリューム2.5で、ほぼ0.5回/hの換気回数を達成することが出来ます。
ちなみに、計画図では2.0となっていました。
多少の施工上の問題があったのかも知れませんね。
こういう時、風量測定をして良かったと思います。
計画図通りのボリュームで使っていたら、換気不足による不具合が起きていたかもしれません。
話を戻します。
外出時は、ボリューム2.0をお勧めします。
人が居ないのに、換気してても仕方ないですよね。少し風量を落とした方が省エネだと思います。
ちなみに、この時の換気回数は0.38回/hとなります。
C値測定の時の9.8パスカル時の通気量は28.5㎥/hでしたから、漏気による換気を含めると2.0でもいけそうですね。
ついでに、給気口内部のフィルターを外した時の風量も測定してみました。
フィルターを外した状態です。
フィルターはこんな感じ・・・。
厚さは40mmくらいでしょうか。
かなり圧損が多いんです。
フィルターに求められる性能が2つあります。
①通気量・・・空気の通りやすさを表します。
②捕集率・・・塵や虫などの防除する具合を表します。
双方のバランスが重要です。
空気はスースー通すけど、塵や虫は通さない・・・。
なんて都合の良いフィルターがあればいいんですけど・・・。
フィルター外せば、圧損が減る分換気量が増える筈・・・。
ボリュームは2.0で測定しました。
結果です。
フィルターの有無による換気風量の違いは、有89.1㎥/h、無102.0㎥/h。
その差12.9㎥/h(12.6%)、確かに風量は増えます。
フィルターを外せば、ボリューム2.5の換気量に相当する事もわかりました。
ちなみに2.0の時の電気代が108円/月、2.5の時の電気代が155円/月です。(どちらも27円/kwhで試算しました。)
わずか月々47円の違いであれば、フィルターを付けてきれいな空気を吸いたいですよね。
でも、問題なのはソコではありません。
様々な要因で、計画通りの風量が出ているかどうかなんて、測ってみなければわかりません。
だからと言って、やみくもに換気風量を上げるのもどうかと思います。
風量測定なんて、簡単に行うことが出来ます。
転ばぬ先の杖だと思って、是非行いましょう。
久々に長いブログになってしまいました。
posted by Asset Red
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