気密工法の歴史

10月9日の『FPの家 H邸/気密測定見学会』に備えて、『気密』に関するお話をご紹介しています。

今回は、竹内昌義・森みわ 両氏の共著『図解エコハウス Can you passive-house it ? 』から一部抜粋したものに加筆・修正させて戴きました。

 

「日本の家には隙間風があったから、シックハウスにならない」

という話は間違いです。

気密の伴わない断熱化がその原因です。

気密層は室内側で完結しなくてはいけません。

エコハウスにとって、家の内側で気密をとることは最重要ポイントです。

通気層と気密層はセットです。

暖かく湿った空気を冷やすと結露してしまいます。

 

我が国における気密層の歴史は北方住宅の歴史そのものと言えます。

北海道の住宅の断熱性能が上がってきた時、外壁の内部に結露が発生し、木材を腐らせるという事例が多発したそうです。

冬季の室温が上がり、室内の飽和水蒸気量も増えたため、その水分が壁内で結露したのが原因でした。

壁内に水分が豊富な空気を侵入させないのが『通気層』です。(防湿層と呼ぶこともあります。)

ポリエチレンフィルムなどを利用して、断熱材の内側に気密・防湿層を設けます。

この施工はやつなぎ目に隙間が無く完結しなくてはなりません。(途切れる事無く連続して設ける必要があります。)

気密層の施工監理は技術と経験が必要です。テープで留める際には必ず木下地のある位置で行います。

さまざまな(通気層の)貫通部を丁寧にシーリング処理する事も大切ですが、そもそも貫通部を少なくする事が大事です。

経験的に言えば、特にうまく気密が出来ていないのが窓廻りでしょう。

ここでは細心の注意が必要となります。

この工法の弱点は、室内に絵を掛けようと壁に釘を打つと通気層に穴が開いてしまう事です。

それを避ける為には、室内側にさらに胴縁を打ち付け気密層を守るようにしなければなりません。

気密工法を必要としない断熱材もあります。

それは吸湿性のある断熱材です。

古新聞や段ボールをリサイクルしたセルロースファイバーや、ペットボトルの原料であるポリエステル断熱材などがこれに当たります。

しかし、これらの吸湿性を持つ材料が吸湿することで『断熱性能が下がる』ということを忘れてはいけません。

こうした断熱材を採用し、通気・防湿層の施工を省略する方々がいらっしゃいます。

室内温度を低くしていれば問題ありません。

でも暖かくしていたら、室内の高湿な空気が断熱材に吸湿され、その断熱性能を大きく低下させてしまいます。

断熱性能の低下した断熱材は、冷たい外気を断熱材の内側に貼られた石膏ボードなどの内装下地に結露を引き起こします。

ここで発生した水分は断熱材が吸収し、さらに断熱材の性能を低下させてしまいます。

この負のスパイラルは冬季中ずっと続き、せっかくの断熱壁も効果を発揮する事が出来なくなってしまいます。

個人的には、断熱材の種類に関わらずその室内側に気密・防湿層をきちんと設け、その上で内装材として吸湿性の高い建材を用い、調湿性を持たせるべきだと考えます。

ここで『ナミタダケ事件』について簡単に書きたいと思います。

昭和48年のオイルショックをきっかけに、北海道では住宅の断熱化への関心が高まりました。

壁、床、天井に100mmのグラスウールを入れるようになりましが、こうした家はぜんぜん暖かくならず逆に大問題を引き起こすことになります。

昭和50年代の話です。

新築してわずか2・3年の住宅で土台や床が腐って落ちるという被害が相次ぎました。

札幌だけで、数百件の被害があったといわれています。

床下では『ナミダタケ』という木材腐朽菌が大発生していました。

ナミダタケはキノコのように大きく増殖して木材を腐らせたと言います。

また吸収し水分を涙のようにたらす事から、その名前がついたといわれています。

その発生原因は、床下土壌からの湿気や壁内の結露水が、グラスウールに吸収され、木材を湿潤状態にしたためと判明しました。

しかし、どうしたらそれを防げるのかという明快な答えもなく業界は混乱しましたが、その後のさまざまな研究による対策がとられることにより、徐々にナミダタケの発生は収まっていったようですね。

通気層工法や、土間床防湿シートはここで生まれました。

室蘭工業大学の鎌田教授により提唱されたのが、断熱材が結露する原因は、在来工法の致命的な欠点である通気性にあるということです。

床と壁の取り合い部や壁と天井の取り合い部に隙間があって、床下から天井まで煙突のように自由に通気するのが、従来の在来工法です。

鎌田教授は気密シートや気密テープを使って気密工事を行う改良型在来工法を「新在来工法」としてマニュアルにまとめ、発表しました。

ここに在来工法の「気密化」の考え方がはじめて登場した訳です。

私たちの住む東京は、北海道や東北ほど寒い時期が長く続く事はありません。それだけに内部結露に関する危機感が欠如しているのかも知れませんね。

先人の方々による様々な苦労やその工夫の末に編み出された『気密・防湿』施工を、単なる思い込みや不勉強による勘違いで台無しにする事の無いようにしたいと思います。

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  posted by Hoppy Red

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