水蒸気対策(続)

前回に引き続き、水蒸気対策について書きたいと思います。

湿気の移動は次の2つの現象により生じます。

①空気の移動を伴う場合

②水蒸気量による差を原動力とする場合

両者の『湿気が移動する速さ』は①よりも②のほうが大きくなります。

今回は内部結露について考えてみたいので、『水蒸気量の差(絶対湿度差)』による移動を理解してみましょう。

水蒸気の分子はとても小さく、多くの建築材料を通り抜けて移動します。

こうした現象を『透湿』といいます。

透湿という現象が起こるため、壁の中などに内部結露が発生する訳です。

材料の種類によって湿気の通しやすさは左右されます。

材料の種類ごとに示された湿気の通しやすさを『透湿率(湿気伝導率)』と呼びますが、

実際は材料に厚みがあるため、湿気の通しにくさを示す『透湿抵抗』という数値を利用する事が多いようです。

下のイラストをご覧ください。

 

これは拡散による空気中の水蒸気の移動を示したものとなります。

左図、仕切り左側が湿度の高い空気。

右側が低い空気になっています。

仕切り壁を無くした場合が右図となります。

水蒸気はたちまち移動し、空気中の水蒸気の量は均一になります。

壁の中が仕切り右側、室内が左側、断熱材内側の材料が仕切り壁と仮定しましょう。

冬の状況ですね。

イラスト左側のようにそれぞれの水蒸気が固定したままなのか、右側のように移動するのか。

断熱材内側にどんな材料を使うかが、その鍵となります。

 

例えば、厚さ12.5mmの石膏ボードなんてどうでしょうか?

従来の住宅に於いては、当たり前の施工方法ですよね。

上表によれば、厚さ12.5mmの石膏ボードの透湿抵抗は0.7㎡・h・mmHg/gとなっています。

透湿抵抗とは、材料内の水蒸気移動のしにくさを表わす係数です。湿気伝導抵抗ともいいます。

透湿係数の逆数で、単位は㎡・s・Pa/ngで表します。

えっ!
単位が違うじゃん。
片やm2・s・Pa/ng、もう片方はm2・h・mmHg/g
どういうこと?
 
なぜか
時間の単位が秒(s)と時間(h)
気圧がPaとmmHg
質量がグラム(g)とナノグラム(ng)
それぞれ基準となる単位に差異があるんですよね。
 
これだけ違うと結果として出される数値も大きく違ってきます。
ここからしばらくは、ひたすら算数の話題になります。
面倒だなーと言う方は、青色部分を飛ばしてください。
 
先程の厚さ12.5mmの石膏ボードの透湿抵抗は0.7m2・h・mmHg/gですから、計算すると次のようになります。
結構、換算が面倒なんですね。
秒と時間の関係は簡単ですよね。3600秒=1時間となります。
PaとmmHgの関係は、1013hPa≒760mmHgとなります。
1hPa=100paですから101300Pa=760mmHg、
したがって1Pa=0.00750246mmHgとなります。
グラムとナノグラムの関係は、1000000000ng=1gです。
 
これを式にすると
②÷3600*0.00750246*1000000000=①
もしくは
①×3600/0.00750246×1000000000=② 
 
途中を計算して
①×2084=②となります。
 
この式に代入すれば換算できる訳です。やってみましょう。
①×2084=0.7m2・h・mmHg/gですから
①=0.7m2・h・mmHg/g/2084=0.00033589251m2・s・Pa/ngとなりました。
なんだか、ややこしいですよね。どちらかに統一してくれればいいんですけど・・・。
 
話を元に戻しましょう。
透湿抵抗とは、1m2当たり、1時間に1gの水蒸気を通すのに、どのくらいの気圧差(mmHg)が必要かということです。

厚さ12.5mmの石膏ボードの透湿抵抗値は0.7です。

これに対して、住宅用プラスチック系防湿フィルムA種は170ですから実に243倍も水蒸気を通しにくい事になります。
水蒸気を通す事で有名な透湿防水シートの抵抗値は0.4ですから、石膏ボードってかなり水蒸気を通す材料のようですね。
「繊維系断熱材って、ビニール袋に入ってるよね。」
「だから、透湿抵抗は170くらいあるんじゃないの?」
確かにそうですよね。
断熱材を覆うビニールに一切破れもなく、連続して隙間なく施工されていれば問題ないんです。
袋入りの断熱材の施工例です。
丁寧に貼られているようですが、よく見ると梁部分への留め付けが雑なようです。
こちらの施工は、断熱材の断面が見えています。
配管廻りの袋が破れていますね。
断熱材が入っていない部分も気になる施工です。
このような施工では、隙間からの水蒸気の侵入を防ぐ事はできません。
覚えているでしょうか?
前回のブログでは、侵入した水蒸気を排出しやすい構造にするのも重要な対策として挙げさせていただきました。
ここでも、材料の選択が大きな問題を引き起こす可能性があるんです。
この辺りの事は次回書きたいと思います。
『FPの家 T邸』
引き続き、気密施工が行われています。
 
梁と上下の壁パネルの接合部をアルミテープで貼り合わせます。
柱頭金物を取付けるために開けた穴は、発泡ウレタンを充填し、平らに切削。
その上からアルミテープを貼って、防湿・気密性を高めます。
工場で生産されるウレタンボードと比較すると、現場発泡ウレタンの透湿抵抗は意外と小さいんですよね。
気密施工マニュアルには、現場発泡ウレタンの場合はその内側に防湿・気密シートの施工性を求められています。
もちろん、FPパネルは防湿・気密シート施工は必要ありません。
写真は、1階部分の柱脚金物と床パネルおよび筋違の取り合い部を撮ったものです。
コンクリートに直結されたアンカーボルトに取付けられた柱脚金物は、冷たくなっています。
ここに室内の暖かい空気が触れると結露が発生します。
弊社では、数回に分けて発泡ウレタンを金物に吹付け、断熱補強を行っています。
高性能エコハウスは、こんなコツコツの積み重ねが大切なんです。

 

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posted by Assed Red

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