吸湿と放湿

現在リフォームを行っているお宅があります。

外皮の断熱補強も行います。

コストダウンを目的に他の現場で余った断熱材等も利用する旨、お施主様にも了承を得ている案件です。

前回採用して、梱包数の関係で余った断熱材も使う積りでいました。

厚さ100mmのウッドファイバー(以下WF)いわゆる木質繊維断熱材です。

ウッドファイバー(木質繊維断熱材)

熱伝導率は0.038W/m·K、厚さ118mmのグラスウール16Kに相当する性能です。

袋に入った荷姿そのまま、ブルーシートに包んで屋外で保存していました。

現場に運び、袋を開けてみると一部の断熱材が濡れています。

(ブルーシートに穴が明いてたのかな?)

早速袋を明け、濡れた断熱材を風通しおよび陽当たりの良い場所に拡げておきました。

(WFはグラスウール(以下GW)と違い、吸放湿性能が高いから大丈夫だよね。)

(しばらく干していれば、使えるかも?)

駄目でした・・・。

一向に乾く気配がありません。

ご存知でしょうか?

WF・GWなどの繊維系断熱材は、繊維中に絡んだ動かない空気が重要です。

木質繊維やガラス繊維自体の熱伝導率はさほど低くありません。

大事なのは、空気です。

でも空気が動いてしまえば、断熱材内部で熱の移動が増大します。

上グラフは防風層の有無による断熱材のR値を示したものです。

どちらも風速が大きくなるほど断熱性能の低下が見られます、

でも防風層のある方が無い方よりも倍くらい性能が高い・・・。

一目瞭然です。

風で空気が動いてしまえば、断熱性能は下がります。

つまり断熱性能の低下を逃れるためには、繊維系断熱材の外側に防風層を設けなければならない。

同様に、断熱材内部の空気が湿っても性能が下がります。

だって、空気よりも水の方が熱を通しますから。

上グラフは、濡れた断熱材の断熱性能を示したもの。

厚さ25mmの繊維系断熱材のR値を100%とした時、濡らした場合のR値は40%に過ぎません。

不思議なことに、濡れてしまえば断熱材は厚みに関係なく一定の断熱性能しか持たないようです。

だから、繊維系断熱材は濡らしてはいけません。

結露なんて言語道断です。

そこで一般的には、次のような構成を採ります。

断熱材の内側に防湿シートを設け、湿気の侵入を防ぎます。

ポリエチレンシート(ビニールみたいなもの)を使うのが一般的です。

夏型結露対策として、可変透湿シートの採用をお勧めしたいところですが・・・。

この辺りのことは割愛します。

そして断熱材の外側に防風シートを設け、冷気の侵入を防ぎます。

防風シートは、防水を兼ねるものが一般的です。

この時、空気や水蒸気の出入りがスムーズなシートを使うことが重要です。

ビニールのように透湿抵抗の高い素材を使ってしまうと、風は入らないけど水蒸気も抜けません。

断熱材内部に湿気が残ってしまいます。

透湿・防水・防風シートの採用が良いでしょう。

外壁合板を採用する場合も注意が必要です。

透湿防水シート同様、透湿抵抗の低いものを使う必要があります。

そして防風層の外側には通気層を設けます。

これにより、防風シートの内外に気圧差が生まれ湿気が外に放出されやすくなります。

本当に断熱材の中の水分って、放出するの?

今回の濡れたWFを見て、そう感じました。

繊維系断熱材の吸湿量と放湿量を示したグラフです。

WFは吸放湿ともにグラフ中最大となっています。

さすが、調湿建材と言われるだけあります。

でも、待ってください。

吸湿量と放湿量の差がありますよね。

WFであれば、229g/㎡と180g/㎡。

外壁面積が180㎡であれば、その差は8820g(8.82㎏)にもなります。

およそ9リットルの水が断熱材内部に残ったまま・・・。

これってどの位の時間で乾くの?

濡れている間の断熱性能は40%に低下し、厚さ40mmの断熱材と同じです。

壁内結露もより進むかもしれません。

濡れても下に下がらないのがWFのメリットのひとつです。

でもGWであれば、重さでずり下がってしまいます。

こうなると、断熱性能は0ですよね。

結論です。

繊維系断熱材は雨などで濡らしてはいけません。

もしも建築途中で濡れることがあれば、すぐに交換しましょう。

今回の断熱材も処分しました。

posted by Asset Red

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